調剤薬局のM&Aは、売り手・買い手・従業員とそれぞれの立場で異なる影響をもたらします。
「売却を考えているけれど、まずはどんな影響があるのか整理したい」と考える経営者様もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、調剤薬局M&Aのメリット・デメリットを売り手・買い手・従業員それぞれの立場からまとめました。
買い手や従業員目線でのメリット・デメリットを把握することで、どのように立ち回れば良いのかが見えてきます。
薬局特化型M&A仲介会社の目線から、本音で分かりやすく解説します。
記事を最後までチェックすれば、M&Aをすべきか否かが明確になりますよ。
売り手から見た調剤薬局M&Aのメリット・デメリット
まずは売り手から見た調剤薬局M&Aのメリット・デメリットを解説します。
メリット
売り手から見た調剤薬局M&Aのメリットは以下の3つです。
- ・売却益が得られる
- ・後継者問題から解放される
- ・経営から解放される
それぞれ詳しく見てみましょう。
売却益が得られる
売り手から見た調剤薬局M&Aの最大のメリットが売却益です。
経営者が調剤薬局を手放す際の選択肢は、以下の4つです。
- ・親族間継承
- ・親族外継承
- ・廃業
- ・M&A
そしてM&Aは、売却益が得られる唯一の選択肢です。売却益は、引退後の生活資金や新たな事業への投資資金となるでしょう。
例えば弊社アウナラでは「営業権3,200万円+固定資産+医薬品在庫」や「営業権400万円+固定資産+医薬品在庫」といった条件で成約した事例があります。
ただし調剤薬局によって売却価格が大きく異なるため、売却益の相場は存在しません。
M&Aは、事業譲渡と株式譲渡に分かれます。
事業譲渡は「調剤薬局事業だけを売却して他の事業は引き続き保有したい」方に、株式譲渡は「事業全体を引き継ぎたい」方におすすめです。
調剤薬局M&Aの相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:調剤薬局の売却を検討中の方必見!相場や高値で売るコツを解説
後継者問題から解放される
調剤薬局の多くが、個人経営です。
全国の薬局数は約58,000店と、コンビニエンスストアの約55,000店を上回っています。そして、薬局の約7割が個人経営というデータもあります。
少子化や若年層の価値観の多様化の影響もあり、薬局では後継者問題が深刻です。
「息子が継いでくれない」と悩む薬局経営者も多いでしょう。
M&Aによって調剤薬局を第三者に引き継げば、後継者問題から解放されます。
「親族に継いでほしい」という望みは叶わないかもしれません。しかし、適切な買い手を見つけられれば、薬局の理念は受け継がれます。
既存顧客にも、引き続きサービスを提供できます。
調剤薬局の事業継承については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:調剤薬局の事業継承を徹底解説!相場や手続き、失敗を避ける注意点を紹介
経営から解放される
近年、調剤薬局業界は規制の強化や報酬改定の影響を大きく受けています。
2024年度には、敷地内薬局において7種類以上の内服薬の調剤を行った場合、その薬剤料が1割減額されることになりました。
そこにドラッグストアの参入や大手チェーンの買収も加わり、個人経営の薬局は厳しい立場に立たされています。
「このまま経営をしていてもどうなるか分からない」と不安を抱える方もいらっしゃるでしょう。
そんななかM&Aで調剤薬局を売却すると、経営責任から解放されるというメリットがあります。
前述のとおり、M&Aでは売却益が得られます。売却益を活用して、何か別のことにチャレンジしてみるのも良いでしょう。
デメリット
売り手から見た調剤薬局M&Aのデメリットは以下の3つです。
- ・取引が複雑で個人でのM&Aは難しい
- ・M&Aのためのコストがかかる
- ・周りからの反対を受ける
1つずつ詳しく見てみましょう。
取引が複雑で個人でのM&Aは難しい
調剤薬局のM&Aには、法律や財務、税務などに関する専門知識が必要です。また事業価値の適正な評価や買い手との交渉、契約条件の確認が必要です。
調剤薬局の経営者が、M&Aを全て自力で行うのは、不可能と言って良いでしょう。
調剤薬局は医療関連の事業です。行政手続きや薬剤師確保など、業界特有の面倒な業務や課題もあります。
デューデリジェンス(買収監査)に備えて膨大な資料も作成しなければなりません。
よって調剤薬局のM&Aでは、仲介業者を利用することとなります。
それも通常のM&A仲介業者ではなく、調剤薬局業界に精通した業者を選ぶことが大切です。
M&Aのためのコストがかかる
調剤薬局のM&Aでは、仲介業者を利用します。そして仲介業者には、手数料を支払わなければなりません。
仲介手数料が数百万円になるケースも珍しくありません。場合によっては、売却益がほとんど残らないでしょう。
一方、自力でM&Aを行った場合の仲介手数料はゼロです。しかしそれは現実的ではありません。
手数料を抑えたいのであれば、成功報酬型でサービスを提供しているM&Aがおすすめです。
成功報酬型なので、M&Aがうまくいかなかった場合、手数料はかかりません。M&Aがうまくいった場合は「売却益から何割」といった形で手数料を支払います。
つまり、売り手側が損をすることはありません。
周りからの反対を受ける
調剤薬局のM&Aでは、顧客・従業員・取引先・家族など、周囲からの反対が予想されます。
長年地元で営業を続けてきた薬局の場合、顧客から「地域医療を支えてきた信念を売るのか」「大手に買収されるとこれまでのように対応してもらえなくなるのではないか」といった批判を受けるかもしれません。
従業員からは「雇用条件が悪化するのではないか」「職場環境が変わるのが不安」といった懸念を示されるかもしれません。
これらの軋轢を放置したままM&A交渉を進めると、買い手との交渉に悪影響が及ぶでしょう。
時間と労力がかかりますが、周囲に丁寧に説明し、不安を解消してあげる必要があります。
買い手から見た調剤薬局M&Aのメリット・デメリット
続いては買い手から見た調剤薬局M&Aのメリット・デメリットを解説します。
メリット
買い手から見た調剤薬局M&Aのメリットは以下の3つです。
- ・人材を確保できる場合がある
- ・新規出店よりも早く事業拡大ができる
- ・リスクが少ない
各メリットについて詳しく解説します。
人材を確保できる場合がある
M&Aでは、原則として従業員の雇用はそのまま継続されます。
よって薬剤師を始めとする優秀な人材を確保できる可能性があります。しかし小規模な調剤薬局で、薬剤師が経営者だけの場合は話が別です。
薬剤師は、慢性的な人手不足に陥っており、採用コストが大きな課題となっています。
M&Aで既存の調剤薬局を買収すれば、すでにそこで働いている経験豊富な薬剤師や従業員を引き継ぐことが可能です。
即戦力となる人材を確保できるだけでなく、従業員が慣れ親しんだ業務フローや顧客対応をそのまま活用できるため、運営のスムーズな引き継ぎが期待できます。
地元密着型の調剤薬局では、地域の患者との関係性を築いているスタッフも多く、こうした人的資産も買収の大きなメリットです。
新規出店よりも早く事業拡大ができる
新しく調剤薬局を出店する場合、店舗の立地選定、内装工事、医療機関との関係構築、薬剤師の採用など、膨大な時間とコストがかかります。
軌道に乗るまでには、数年かかるでしょう。
一方、既存の調剤薬局をM&Aで買収すれば、既存の顧客基盤や運営体制をそのまま引き継ぐことができます。
スピード感を持って、事業拡大ができます。
M&Aは新規出店に伴う不確実性を最小限に抑えながら、迅速に事業規模を拡大する手段として魅力的です。
リスクが少ない
調剤薬局のM&Aは、リスクを軽減しつつ事業拡大ができる手段として注目されています。
新規出店では、立地や顧客獲得の不確実性が大きなリスクとなります。しかし既存の調剤薬局を買収する場合、すでに顧客基盤があるため、リスクは低いと言えるでしょう。
買収前に行うデューデリジェンスによって、収益性や負債状況、顧客層などの詳細な把握も可能です。
また既存薬局には、地域の患者との信頼関係や、医療機関との連携が確立されています。それをそのまま活用できる点もリスクを抑える要因となります。
M&Aは、新規事業立ち上げに伴う多くの不確定要素を排除し、安定した収益を短期間で確保できる方法として有効です。
デメリット
買い手から見た調剤薬局M&Aのデメリットは以下の2つです。
- ・簿外債務のリスクがある
- ・従業員が離職するリスクがある
各デメリットについて詳しく見てみましょう。
簿外債務のリスクがある
調剤薬局のM&Aでは、簿外債務が発覚するリスクがあります。
簿外債務とは、財務諸表に記載されていない負債や将来的な支払い義務のことです。例えば未払いの残業代や社会保険、買掛金などが簿外債務に該当します。
簿外債務は買収後に表面化する可能性があり、予期せぬ追加コストを発生させる原因となります。
簿外債務のリスクを最小限に抑えるためには、M&A前に十分なデューデリジェンスを行い、財務状況や契約関係を徹底的に調査することが不可欠です。
しかし、調査には限界があり、見落としが生じる場合もあります。
従業員が離職するリスクがある
調剤薬局M&Aのメリットとして「人材を確保できる場合がある」とお伝えしました。
しかし調剤薬局のM&Aでは、買収後に従業員が離職するリスクもあります。特に薬剤師やベテランスタッフが離職する場合、運営に大きな影響を及ぼすでしょう。
従業員が離職する原因としては、以下のようなものがあります。
- ・新しい体制や方針に適応できないから
- ・待遇や労働環境の変化に対して懸念があるから
特に地元の患者と密接な関係を築いてきたスタッフが辞めた場合、その信頼関係を維持するのは難しくなるでしょう。
従業員の離職を避けるには、M&Aの過程で従業員とのコミュニケーションを十分に行い、不安を解消する努力が必要です。
また、買収後も適切な待遇や働きやすい環境を整えることが、離職防止につながります。
従業員から見た調剤薬局M&Aのメリット・デメリット
最後に、従業員から見た調剤薬局M&Aのメリット・デメリットを解説します。
メリット
従業員から見た調剤薬局M&Aのメリットは以下の2つです。
- ・雇用が継続される
- ・待遇や福利厚生が改善される
それぞれ詳しく見てみましょう。
雇用が継続される
経営者の高齢化や後継者不在によって調剤薬局が廃業すると、従業員は職を失います。職を失うと、転職活動をしなければなりません。
一方、M&Aでは薬局が存続し、従業員の雇用は守られます。
大手企業や成長中の企業が買収した場合、経営基盤が強化されます。よって調剤薬局の運営が安定し、従業員の雇用も保証されるでしょう。
買収されると悲しい気持ちも分かります。
しかし、規制強化や報酬改定によって、個人経営の薬局は厳しい状況に立たされています。
M&Aによって調剤薬局が買収されれば、少なくともしばらくの間は「うちの薬局潰れそうだな…」といった心配は不要となり、安心して働けるでしょう。
待遇や福利厚生が改善される
M&Aを通じて大手企業や資本力のある企業に買収されると、従業員の待遇や福利厚生が改善される可能性があります。
大手企業は給与体系が明確であり、昇給やボーナスの支給が安定している場合が多いです。また、福利厚生も充実している場合が多いです。
例えば現在、「サービス残業がある」「有給をなかなか申請できない」という不満を抱える方もいるでしょう。
大手企業や資本力のある企業に買収されると、こういった心配は少なくなります。
また大手の経営ノウハウを活用することで、効率化や業務負担の軽減が進み、従業員の働きやすさが向上します。
ワークライフバランスが整い、長期的に安心して働ける環境が整備されるでしょう。
デメリット
従業員から見た調剤薬局M&Aのデメリットは以下の2つです。
- ・労働環境が大きく変化する
- ・業務負荷増加の可能性がある
1つずつ詳しく見てみましょう。
労働環境が大きく変化する
新しい経営者や企業が運営を引き継ぐことで、これまでの業務方針や職場文化が変わる可能性があります。
雇用が継続されるというメリットはありますが、従業員は新しい仕組みに適応しなければなりません。
慣れ親しんだ働き方が失われ、ストレスを感じる方も出てくるでしょう。
大手企業が買収した場合、画一的なルールや標準化された業務フローが導入されることで、地域密着型の柔軟な働き方が制限されるケースがあります。
患者との関係性や業務の自由度が低下し、不満が出てくることも考えられます。新しい上司や同僚との人間関係の構築も大変です。
業務負荷増加の可能性がある
新しい経営方針の下で効率化が進められると、人員削減や業務の再編が行われる可能性があります。
その結果、一人当たりの業務量が増え、残業時間が増加してしまうかもしれません。また、新しいシステムが導入されると、慣れるために苦労するかもしれません。
大手企業が経営する調剤薬局では、個人経営と比較して、売上や利益の目標が明確に設定される傾向にあります。
よってノルマの増加や業務のペースアップも求められるでしょう。
従業員の負担が増えるだけでなく、プレッシャーも大きくなります。
トレーニングや教育が不足している場合、従業員が十分に新しい業務に適応できず、さらなるストレスや不満を抱えてしまうかもしれません。
調剤薬局M&Aの売却相場
調剤薬局によって、M&Aにおける売却相場は大きく異なります。
例えば弊社アウナラでは「営業権3,200万円+固定資産+医薬品在庫」や「営業権400万円+固定資産+医薬品在庫」で成約した事例があります。
このように、調剤薬局M&Aの売却相場を定めることはできません。
調剤薬局M&Aの売却価格は、以下3つの要素で決まります。
- ・時価純資産価額
- ・営業権
- ・1ヶ月あたりの技術料
また高値で売却できる調剤薬局には、以下の特徴があります。
- ・薬剤師を多く雇用している
- ・立地が良い
- ・M&Aの適切なサポートを受けている
上記にいくつ当てはまっているかによって、売却価格が高額になるか、安くなるかが大まかに分かります。
調剤薬局M&Aの相場や高値で売るコツについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:調剤薬局の売却を検討中の方必見!相場や高値で売るコツを解説
調剤薬局におけるM&Aでの売却事例
弊社アウナラでの調剤薬局事業譲渡案件の成約事例を、3つピックアップして紹介します。
成約事例1
地域 | 東日本地域 |
業種・職種 | 門前医療機関主科目 内科系 |
調剤基本料 | 1 |
後発加算 | なし |
月技術料 | 287万円 |
月薬剤料 | 743万円 |
日枚数 | 45枚 |
ドクター年齢 | 50代 |
在宅 | なし |
従業員引継ぎ | あり |
成約結果 | 営業権3,200万円+固定資産+医薬品在庫 |
成約事例2
地域 | 東日本地域 |
業種・職種 | 門前医療機関主科目 内科系 |
調剤基本料 | 1 |
後発加算 | 1 |
月技術料 | 200万円 |
月薬剤料 | 551万円 |
日枚数 | 41枚 |
ドクター年齢 | 60代 |
在宅 | なし |
従業員引継ぎ | なし |
成約結果 | 営業権1,700万円+固定資産+医薬品在庫 |
成約事例3
地域 | 東日本地域 |
業種・職種 | 門前医療機関主科目 外科系 |
調剤基本料 | 3 |
後発加算 | 3 |
月技術料 | 127万円 |
月薬剤料 | 469万円 |
日枚数 | 31枚 |
ドクター年齢 | 50代 |
在宅 | あり |
従業員引継ぎ | あり |
成約結果 | 営業権150万円+固定資産+医薬品在庫 |
他の成約事例も気になる方は、以下をチェックしてみてください。
>>薬局特化型のM&A仲介会社「アウナラ」の成約事例はこちら
調剤薬局のM&Aはアウナラにおまかせください
アウナラは、薬局業界に特化したM&A仲介サービスを提供している会社です。
チームには、元薬歴システムメーカーの代表をはじめ、薬剤師や公認会計士など、各分野の専門家が揃い、クライアントのM&Aを全力で支援しています。
料金体系は成功報酬型を採用しており、M&Aが完了するまでは手数料が発生しません。
さらに、仲介手数料は売却益の一部から算出されるため、売却を検討している企業様は費用負担なしでM&Aを進めることが可能です。
アウナラは、全国の調剤薬局のM&Aを数多く手がけており、薬価に関する交渉や税務対応のサポートなども含む幅広い実績を持っています。
また、すべての調剤薬局にM&Aを推奨するわけではなく、まずは「M&Aが最適かどうか」を慎重に判断します。相談料も完全無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
本記事では、調剤薬局M&Aのメリット・デメリットを売り手・買い手・従業員それぞれの立場から解説しました。
調剤薬局のM&Aを行う際、売り手のメリット・デメリットだけを考えていてはいけません。
買い手・従業員、それぞれの立場に立って考えることで、どのように立ち回ると良いのかが見えてきます。
そして調剤薬局のM&Aは、仲介会社に任せるのがおすすめです。薬局業界に特化しており、成功報酬型で損をしない「アウナラ」については、以下よりぜひチェックしてみてください。