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売り手のための【薬局譲渡】マニュアル~失敗しない秘訣&成功事例

薬局譲渡を考えている店主


薬局の「譲渡」とは?


この記事では、薬局の譲渡を「事業譲渡」と定義して解説していきます。


事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社が営んでいる事業を第三者に売却することです。事業譲渡には、事業の一部を譲渡する「一部譲渡」と、展開している事業の全てを譲渡する「全部譲渡」とがあります。

例えば、事業A・事業B・薬局事業の3つの事業を営んでいたとしましょう。薬局事業のみを切り離して他社に譲渡するのは一部譲渡、事業Aと事業Bも一緒に譲渡する場合は全部譲渡に該当します。

事業には事業を遂行するために作られた組織をはじめ、資金や借金、技術、ブランドなどさまざまな財産が含まれていますが、事業譲渡においてはこれらの財産を一括りにして譲渡するのではなく、譲渡したいものだけを選定して個別に契約します。

事業譲渡で対象となる資産は有形と無形に分けられます。

・有形資産:土地、建物、商品、証券など

・無形資産:商標、従業員、取引先など

売り手側は、譲渡する資産別に買い手側と契約を結びます。例えば土地・建物・従業員のみを引き継ぐ場合は合計3つの契約を結び直します。

売却したい事業のみを売却でき、かつ欲しい事業のみを購入できる点が、事業譲渡の特長といえるでしょう。

引き継ぐ事業や資産ごとに契約を締結するため負債を外して引き継げるという点は、買い手側にとって大きなメリットです。「薬局の運営事業のみを売却し、引き続き会社を経営していきたい」と考えている売り手側にとっては、会社の経営権を手元に残して事業を売却できる点がメリットだといえるでしょう。

事業譲渡の注意点は、薬局の運営に必要な許認可は譲渡できないということ。買い手側は、事業譲渡後に許認可を取得する必要があります。また、譲渡の際に発生する消費税についても注意が必要。譲渡対象の資産の中には消費税が課されるものもあり、発生した消費税は買い手側が負担しますが、税務署に消費税を納付するのは売り手側になります。

M&Aと譲渡の違い

M&Aとは、「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」のことで、譲渡はM&A手法の一つです。買収はさらに「株式譲渡」「株式交換」「事業譲渡」「会社分割」などに分けられ、合併も「新設合併」と「吸収合併」とに細かく枝分かれしています。これらのM&A手法の中で、事業譲渡と混同されやすいのが、「株式譲渡」と「会社分割」です。

株式譲渡と事業譲渡の違い

株式譲渡とは、売り手側が保有している株式を買い手側に売却するM&A手法の1つ。株式を売却すると同時に売り手側の経営権が買い手側に移るという点が、株式譲渡と事業譲渡の大きな違いです。株式譲渡によって経営権を得た買い手側は、買収した会社を子会社化したり自社に吸収させたりできるため、売却した会社が消滅することもあります。

株式譲渡は株式の売買契約を締結することで成立しますが、会社を丸ごと売却する株式譲渡は事業譲渡よりも売却益が高くなる傾向にあります。加えて、複数の契約を締結する必要のある事業譲渡と比べると、取引が成立してから契約締結までのプロセスがスムーズなのもメリットの1つ。従業員の数が多く労働契約の締結を個別にする手間を省きたいなど、契約をできるだけ簡潔に済ませる手段として株式譲渡が選ばれるケースも少なくありません。

株式譲渡のデメリットは、資産のみの買収ができないこと。多額の負債を抱えている売り手企業は売却先が決まらないリスクが高くなりますし、買い手側にとっても簿外債務のように貸借対照表では確認できない債務を抱えている会社とは知らずに購入してしまうリスクがあります。譲渡対象を選べる事業譲渡なら、こうしたリスクを回避できるでしょう。

会社分割と事業譲渡の違い

会社分割とは、事業を他社に分割する譲渡方法のことです。売却された事業は、買い手側の会社に吸収されて事業の一部になる(吸収分割)、または買い手側が新たに設立した会社のメイン事業(新設分割)となります。

事業を譲渡するという点は共通しているものの、会社分割は事業譲渡のように資産のみを買収することはできず、買い手側は簿外債務や負債も事業の一部として包括的に引き継ぎます。また、金銭で取引する事業譲渡とは異なり、会社分割は原則として株式で行われます。これらの特徴から、会社分割は組織を再編することを目的とした譲渡に向いているM&A手法といえるでしょう。

薬局を譲渡するべきケースとは?

薬局の継続が困難になったとき

主の病気や身内の事故、災害など何らかの理由で薬局を続けることが困難になれば、廃業を選択することになるでしょう。廃業には医薬品の廃棄や原状回復といった費用がかかりますが、それを回避できるのが事業譲渡です。事業譲渡で売り手側は売却益を得られるうえ、他社が継続して経営してくれるためお店を残すことができます。

売上が出ずに薬局の経営を続けることが難しい、または薬局事業が足を引っ張って経営が傾いているという理由から、薬局の継続が困難になることもあります。この場合も、事業譲渡を選択することによって廃業に必要なまとまった資金を準備することがなくなるうえ、事業を清算するまたは経営を立て直すといった選択肢が広がります。

引退したいとき

高齢を理由に、薬局の経営から手を引きたいと考えている経営者も少なくありません。継承者がいなければ、引退と同時に薬局を廃業することになるでしょう。ここで問題となるのが、従業員を解雇しなければならなくなること、薬局の利用者に迷惑がかかることです。

従業員と利用者の問題を同時に解決するのが、事業譲渡です。第三者に全従業員の雇用確保も含めた薬局事業を継承すれば解雇を回避できますし、利用者も従来通り薬局を利用できるでしょう。

後継者がいないとき

薬局の後継者が見つからなければ、その薬局は店じまいをしなくてはなりません。薬局に愛着を持っている経営者にとって廃業という選択は精神的に辛いことですが、買い手が現れれば事業をそのまま受け継いてもらえます。

M&A仲介会社利用すれば、後継者候補を身内や知り合いから第三者まで拡大して探せるようになるでしょう。第三者の中には、薬局の経営に熱意を持って取り組んでいる人もいます。薬局事業に対する想いを共有できる相手に譲渡すれば、譲渡後も安心して薬局の成長を見守ることができるのではないでしょうか。

多店舗展開している中の一部の薬局だけを譲渡したいとき

事業譲渡では、展開している全ての店舗を譲渡することも、一部の店舗を譲渡することも可能です。例えば10店舗の薬局を展開している場合、採算が合わない2店舗のみを選んで売却できるのです。

売上の悪さは店舗の評価を落とす材料ともなりえますが、例えば「売上はそこそこだが、立地が探していた条件にぴったりだ。譲渡してもらいたい」というふうに、売上以外の条件に魅力を感じる買い手もいるため、譲渡を検討する価値はあるでしょう。

複数事業のうち薬局事業を譲渡したいとき

薬局の他にも複数の事業を展開していて薬局事業のみを手放したいと考えている場合にも、事業譲渡が適しています。事業譲渡では、薬局事業の全てまたは一部を売却できます。譲渡するのは事業のみであるため、会社を維持して残りの事業に注力したい、または薬局事業を手放して経営を立て直したい人にとっては最善の策となるでしょう。

薬局譲渡を考える店主が知っておきたいこと

薬局譲渡の流れ

薬局譲渡の流れを、売り手側の視点からご紹介します。

1. 薬局の買い手を見つける

薬局の事業譲渡を決めてから最初にすることは、薬局の買い手探しです。譲渡したいと思えるような買い手といつ出会えるのかは誰にも分かりません。時間がかかることを想定し、早めに行動するのが得策です。

買い手を見つける手段の一つとして、知人や身内に声を掛けることが挙げられます。M&Aでの事業譲渡を視野に入れる場合は、マッチングサイトやM&A仲介会社による紹介を利用すれば対象が広がり、候補が見つかりやすくなるでしょう。第三者から買い手を探す場合は、機械的にピックアップされた買い手のリスト(ロングリストといいます)から絞り込んでショートリストを作成し、さらに2~3社まで絞り込み最終決定をします。

2. 買い手側と「秘密保持契約」を締結する

秘密保持契約とは、「事業譲渡にかかわる情報を外部に漏らさない」と書面上で約束することです。

事業譲渡の交渉では、資産内容や薬局の経営状況など自社にとって重要な情報を買い手側に伝える必要があります。秘密保持契約は、買い手側が売り手側の秘密情報を他言したり不正使用したりすることを防ぎ、買い手が約束を破った場合は損害賠償を求めるができます。

3. 買い手側と「基本合意契約」を締結する

基本合意契約とは、売り手側と買い手側とが薬局の譲渡内容について合意に至った際に結ぶ契約のこと。購入を前提とした仮契約と考えると分かりやすいでしょう。

買い手側は、基本合意契約締結後薬局の現地調査(デューデリジェンス)を行います。これは買い手側に伝えられた情報の真偽を精査する作業となり、追加情報を求められることがあります。その場合は速やかに対応しましょう。

デューデリジェンスの結果、買い手側が引き続き購入を希望し売り手側も譲渡を望む場合は、事業譲渡契約に進みます。

4. 買い手側と「事業譲渡契約」を締結する

事業譲渡契約とはM&Aにおける最終契約書の1つで、事業譲渡が正式に合意に至った際に売り手側と買い手側との間で交わされる契約のこと。自社が株式会社の場合は、原則として事業譲渡契約を結ぶ前に取締役会を開き、特別決議を得ておく必要があります。

事業譲渡契約の書面上に記載されている内容は、基本合意契約と異なり法的拘束力を持ちます。

5. 事業譲渡に伴う諸手続きを行う

事業譲渡が正式に決まった時点で、以下のような手続きが発生します。

・名義変更:売り手側の名義であるものを買い手側の名義に変更する

・行政上の手続き:保健所などで各種手続きを行う

・株主への通知:事業譲渡の効力発生日(契約内容の効力が発生する日)の20日前までに株主総会を開き、株主に事業譲渡の旨を伝える。

スムーズな薬局譲渡のためにしておきたいこと

薬局譲渡をスムーズに行うためには、事前の段取りが不可欠です。

具体的には、「買い手探しに難航することを見越して早い段階で行動する」「必要と考えられる情報を収集し整理する」「交渉がやりやすくなるように準備する」など。その他に、「買い手が欲しくなるような薬局にするには」という視点から対策を講じましょう。

具体策として、以下の4つをご紹介します。

1 清潔できれいな環境を整える

2. 薬局を経営するうえで必要な薬剤師の数を確保しておく

3. 利用者の満足度を上げる

4. タイミングを見計らって従業員に事業譲渡を伝える

1. 清潔できれいな環境を整える

譲渡前に、内装や設備はできるだけきれいな状態にしておきましょう。薬局の状態が良ければ良いほど売却額も高くなるうえ、環境の良し悪しは働くスタッフの離職率にも影響します。

内装や設備を新しくすることは譲渡に関わる人々の心象をアップさせ、結果的にコスト以上のメリットを得られる可能性が高まります。

2. 薬局を経営するうえで必要な薬剤師の数を確保しておく

薬局の運営に欠かせない薬剤師ですが、薬剤師不足に悩んでいる企業は多いため、「薬局を経営するのに十分な薬剤師の数が確保できている」という条件が加わるだけで買い手候補が増え、より良い条件で売却できる可能性も高まります。

薬剤師の役割は、調剤から接客まで多様化しています。今後見直される可能性はありますが、厚生労働省が定めている「1日の平均取扱処方箋40枚につき1人の割合で薬剤師を配置する」ことを目安に、余裕を持たせた人数を確保するのが理想的。譲渡前に、店舗の規模や経営状況と薬剤師の数とのバランスが取れているかどうかを確認しましょう。人手不足と考えられる場合は、労働環境や労働条件等を見直して離職率を下げると共に、新たな薬剤師を受け入れる体制を整えます。

3. 利用者の満足度を上げる

特定の地域に強い基盤を作ることを目的として、地域密着型の薬局を買収する(ドミナント戦略)大手薬局チェーンも少なくありません。地元の人たちに愛されている薬局は、ドミナント出店を展開している大手薬局チェーンにとって喉から手が出るほど欲しい存在です。地域住民の信頼が厚く利用者を多く抱えている薬局は買い手が見つかりやすい傾向にあるため、譲渡する前には利用者の満足度を上げておくことが得策だといえるでしょう。

利用者の満足度が上がることによって、利用者はますます薬局に愛着を持つようになるとともに、良い評判を聞き新たな利用者が増えることも考えられます。「繁盛している薬局」は、事業譲渡で評価される際に大きなプラス材料となります。

4. タイミングを見計らって従業員に事業譲渡を伝える

経営者の交代は、従業員にとって不安要素となります。働くモチベーションの低下や離職を防ぐためにも、事業譲渡の告知は譲渡が確実に決まった後に行いましょう。 告知前には「従業員の不安を和らげるために何をどのように伝えるか」「従業員から継続して働いてもらうためにできることは何か」を考えて情報を整理し、伝えるべきことが正しく伝わるように告知内容を決めます。告知後は「いつでも、どんなことでも相談にのります」というフォローアップの姿勢を見せ、従業員の不安を払しょくするよう努めましょう。

薬局の譲渡時に必要な手続き

薬局譲渡の際は行政上の手続きが必要となりますが、許可も含めると全部で28項目あります。

手続きの中にはケース・バイ・ケースのものもあるので、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。ここでは、薬局譲渡における主な手続きをご紹介します。

1. 薬局開設許可

「薬局開設許可」とは、薬局の開局にあたって必須で取得すべき許可のこと。薬局開設許可がなければ薬局を営業できません。

薬局開設許可は、薬局のある地域を管轄している保健所に申請します。申請には所定の「薬局開設許可申請書」や手数料、店舗の平面図、保険薬剤師の情報が記載されている書類などが必要です。具体的な申請方法については、管轄の保健所のホームページで確認してください。

2. 保険薬局指定申請・保険薬局機関届

「保険薬局指定申請」と「保険薬局機関届」は、薬局が公的医療保険(国民健康保険など)に適用される調剤を行うために必要な手続きのこと。薬局譲渡によって申請内容が変更された場合に申請します。

2つとも薬局のある地域を管轄している地方厚生支局で受け付けており、申請には「保険医療機関・保険薬局指定申請書」のほか、社会保険または労働保険への加入状況を報告するための添付書類が必要です。

3. 店舗販売許可

「店舗販売許可」は医薬品を販売するために必要な許可で、店舗のある地域を管轄している保健所に申請します。複数店舗がある場合は、店舗ごとに申請が必要となる点に注意しましょう。

店舗販売許可の審査は、各地方自治体が設定している店舗設備の基準に照らし合わせて行われます。申請する前に、基準を満たすように販売体制を整えておきましょう。

4. 特定の患者を対象に業務を行うために必要な届出

手続きの中には、特定の法律において区分されている患者に対する調剤業務に必要な届出があります。主なものは以下のとおりです。

・生活保護法医療機関指定申請…生活保護を受けている人に対して調剤業務を行った場合に、医療報酬を受け取るために必要な申請

・労災保険指定薬局申請…労災認定患者に対して調剤業務を行うために必要な申請

・自立支援医療機関指定申請…障害者総合支援法に基づき、医療費の申請をするために必要な申請

薬局を閉店するまでの手順

薬局譲渡を行う際には、薬局を一旦閉店する必要があります。閉店するまでの主な流れと行動するタイミングは以下のとおりです。

1. 廃業届の準備:開店日の3か月前

廃業届は全ての作業が終わった時点で提出するものですが、届出に必要な情報を収集して書類を作成する手間があるため、閉店日の3か月ほど前から準備を始めるのが賢明です。必要な手続きとそれに伴う書類や提出先などをリストアップし、漏れがないように準備を進めていきましょう。

2. 物件を解約する:閉店日の2~3か月前

賃貸物件で薬局を経営している場合は、不動産に解約を申し出る必要があります。解約を申し出る時期は不動産会社によって異なりますが、立ち退く3か月前が一般的。物件解約のタイミングを決める際は、立ち退き前の原状回復にかかる期間を考慮することも忘れないようにしましょう。

3. 医薬品などを処分する:閉店日の1~3か月前

事業譲渡の前には売れ残った医薬品を処分しておく必要がありますが、処分方法としては「閉店セールを実施する」「メーカーに返品する」「他店に回す」ことが挙げられます。閉店日の1か月前には在庫を極力残さないように管理することが大切です。

4. 医薬品以外のものを処分する:閉店日の1か月前

医薬品以外に処分の対象となるのは、設備や備品です。「廃棄するもの」「他店舗に回すもの」「撤去するもの」「解約するもの(リース物件など)」に分類し、それぞれ処分方法を検討しましょう。

当然ですが、処分の対象となる設備や備品が多ければ多いほど時間がかかります。リース契約しているものに関しては事前告知が必要ですから、そのタイミングも加味してスケジュールを組みましょう。

5. 従業員・利用者・医療機関に対応する:閉店日の1か月前

薬局の閉店日が決まったら、その旨を関係者に伝えましょう。関係者別の伝え方のポイントは以下のとおりです。

・従業員…閉店に伴う解雇を閉店日の1か月前に告知する。閉店後の身の振り方に不安を覚える従業員を考慮し、再就職について相談にのることも伝える。

・利用者…新たな薬局を探してもらう期間を考慮し、閉店日の1か月前には開示する。

・医療機関…閉店日の1ヶ月ほど前には取引先のクリニックや病院に対して閉店することを伝え、患者に新しい薬局を紹介して貰うよう依頼する。

6. 各種契約を解約する:閉店日の1か月前

ガスや水道、電気など閉店に伴い解約が必要なものについても、閉店日までに手続きを済ませましょう。目安としては閉店日の1か月ほど前から手続きを始めますが、解約に必要な書類を集めたり手続きが多かったりする場合は、閉店日の2~3か月ほど前から動くのが無難です。

薬局を譲渡するまでにかかる期間

事業譲渡は、買い手が見つかり譲渡契約を結んでから全ての手続が終わるまで1年ほどかかるといわれています。ただし、譲渡する規模や事業数などによって期間は長くなったり短くなったりするため、参考程度にとどめておくとよいでしょう。

できるだけ最短で事業譲渡を完了させたいのであれば、仲介会社などの専門家に依頼するのが賢明。費用はかかるものの、自力で進めるのに比べて大幅な時間短縮が期待できます。中には売り手側は費用が掛からない仲介会社もあるため、豊富な買い手候補を持ち売り手ファーストな仲介会社を探してみてください。

薬局譲渡を支援する仲介会社とは

仲介会社は薬局を譲渡したい側と購入したい側の間に立ち、スムーズに事業譲渡が進むようサポートする存在です。支援内容は各社によって異なりますが、売り手側への支援としては以下のようなものがあります。

・事業継承に関するアドバイス

・売り手と買い手のマッチング支援

・各種書類の作成

・買い手との交渉

・手続きに関するサポート

・企業価値評価(株式などをもとに対象企業の価値を算出すること)の実施

譲渡支援にかかる手数料

一般的に、薬局の事業譲渡を仲介会社に依頼する場合は手数料が掛かりますが、手数料には複数の種類があり、料金は仲介会社によって異なります。

主な手数料の種類を以下にご紹介します。

1. 相談料

相談料とは、事業譲渡の相談をする際に発生する費用のことです。多くの仲介会社では初回相談料無料としていますが、中には有料としているところもあるため事前に確認しましょう。

2. 着手金

事業支援をすると正式に決めてから仲介会社に支払う手数料が着手金。事業譲渡の成否にかかわらず支払う必要があります。

相場は50~300万円程度ですが、最近では着手金不要とする中間会社も増えています。

3. 中間金

基本合意書締結後に仲介会社に支払う手数料を中間金といいます。中間金は成功報酬の5~30%程度が目安。中には中間金を定額としているところもあり、その場合の相場は100万円前後です。

中間金は必ず発生するものではなく、無料としている仲介会社も少なくありません。

4. 月間報酬

月間報酬とは、事業譲渡が成立するまで毎月仲介会社に支払う手数料のこと。月間報酬の相場は毎月30~200万円と幅があります。

月額報酬を設定している仲介会社と無料としている仲介会社があるので、事前に確認しておきましょう。

5. 成功報酬

事業譲渡が成立した時点で仲介会社に支払うのが成功報酬です。仲介会社のホームページで「完全成功報酬」という言葉を目にすることがありますが、これは「手数料は成功報酬のみ」であることを意味しており、成功報酬以外の手数料は基本的に掛かりません。

成功報酬の計算で仲介会社が用いているのは、あらかじめ設定した報酬基準額に応じて報酬率をかける「レーマン方式」と呼ばれる計算式。例えば5億円以下の報酬基準額に対して5%、5~10億円の報酬基準額に対して4%の報酬率を設定していたとすると、7億円の事業譲渡に対する成果報酬は以下のように計算されます。

・5億×5%=2,500万円

・2億×4%=800万円

・2,500万円+800万円=3,300万円

成功報酬は取引の規模が大きくなるにつれて高額になりますが、多くの仲介会社では、小規模な事業規模の譲渡支援においても利益が得られるように最低成功報酬額を設定しています。

譲渡支援を受ける場合の注意点

事業譲渡の成功率アップにつながる譲渡支援を受けるには、薬局の事業譲渡に精通している仲介会社を選ぶことが肝要です。

薬局の事業譲渡は特定の法律や手続きが絡む分野ですが、薬局のM&Aに特化した経験豊富な仲介会社であれば、薬局や医療機関などに特化したネットワークから薬局の購入を望んでいる企業を見つけ、薬局の事業譲渡に存在するリスクや薬局業界の状況を把握したうえでさまざまなアドバイスを提供してくれるでしょう。 仲介会社を選ぶ際は、専門性に加えて料金形態や相談のしやすさなども加味しましょう。多くの仲介会社では初回無料相談を実施していますので、自分に合った会社を見つけるために活用してみてください。

薬局譲渡を成功させるには

薬局譲渡の成功例

薬局M&Aの成約率99.7%・売り手様は完全無料の仲介会社、アウナラが実際に行った譲渡支援の中から、成功例を3つご紹介します。

事例1. 思いを受け継いでくれる買い主に安心して譲渡を

・日枚数:51枚

・月技術料:144万円

・月薬剤料:361万円

・結果:営業権430万円+固定資産+医薬品在庫

東日本地域で長年薬局を経営されていた60代のI様から、譲渡支援のご依頼を受けました。地元で長年薬局を経営し、薬局と利用者に愛情を注いでいたI様の一番の気がかりは、「薬局に対する想いに共感してくれる方に薬局を譲りたいが、そういう人は現れるのだろうか」ということ。数回に渡って打ち合わせを重ね、買い手候補のイメージを明確にした結果、I様よりも若い世代で、地元で薬局の開業を目指されている理想的な買い主様を見つけることができました。

無事に薬局を譲渡したI様は、「若い世代に引き継げて安心した。これからは薬局を経営している時にできなかった夫婦旅行や趣味に時間を費やしたい」と嬉しそうに語ってくださいました。

事例2. 従業員を全員受け入れ&希望よりも高額で譲渡に成功・日枚数:45枚

・月技術料:287万円

・月薬剤料:743万円

・結果:営業権3,200万円+固定資産+医薬品在庫


薬局事業を清算し、経営の立て直しをお考えだったO様が気がかりだったのは、薬剤師を含む従業員のこと。何度も面談を重ねてどの方法が一番良いかをO様と共に検討し、最終的に事業譲渡がベストであるとの決断に至りました。

従業員全員の引き継ぎを受け入れてくれる譲渡先が決まり、その後はトントン拍子で話が進んでいきました。O様が見積もっていたよりも企業評価が高かったことと、譲渡先の開業者様が求めていた薬局の条件を満たしていたこともあり、O様の希望譲渡額よりも高額で売却が実現。O様にも開業者様にもご満足いただける結果となりました。

事例3. 「町の小さな薬局」のスピード成約を実現

・日枚数: 28枚

・月技術料: 121万円

・月薬剤料: 651万円 ・結果: 営業権150万円+固定資産+医薬品在庫

最初にご相談を受けた際、「小さな薬局なので、譲渡先が決まるかどうかが不安です」と仰っていたB様。譲渡先が見つからなかった場合は廃業を考えておられました。

ご要望や規模に見合った譲渡先を丁寧に探した結果、B様の地域で開業を希望していた薬剤師が見つかり、譲渡に前向きな姿勢を見せてくださいました。交渉中は特にトラブルは発生せず、買い手が見つかってから3か月弱で無事に事業継承が完了しました。

手数料0円で薬局を譲渡するなら

アウナラは、調剤薬局に特化したM&A仲介会社。調剤薬局の存続支援を目的とし、お客様のご要望にあわせてM&A手法を使い分けて成約へと導きます。譲渡支援においては、M&Aコンサルタントや税理士などで編成された薬局専門家チームが、譲渡事業に関するご相談から最終契約締結まで全力でサポートしています。

売り手様の仲介手数料は、取引規模の大きさに関係なく0円。成約率は99.7%と、多くの売り主様が薬局譲渡を実現しています。

アウナラでは無料個別相談会を実施し、譲渡に関する素朴な疑問から譲渡方法・譲渡にかかる費用まで、あらゆるお悩みにお応えしています。相談会を利用したからといって譲渡支援を依頼する必要はなく、営業も一切いたしません。お気軽にご利用ください。

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