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調剤薬局の譲渡に必要な手続きとは?遡及申請やかかる期間についても解説

調剤薬局の譲渡に必要な手続きとは?遡及申請やかかる期間についても解説

調剤薬局の譲渡に必要な手続きは、方法や売り手・買い手によって異なります。

期間はどんなに短くても6ヶ月かかります。2年かかる場合もありますが、個人経営の調剤薬局であれば、1年以内に完了するケースも珍しくありません。

「M&Aによる調剤薬局の譲渡を検討しており、必要な手続きについて確認したい」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。

今回は、売り手と買い手に分けた調剤薬局の譲渡に必要な手続きやかかる期間についてまとめました。

薬局特化型M&A仲介会社の目線から、本音で、分かりやすく解説します。

記事を最後までチェックすれば、調剤薬局の譲渡手続きについてひと通り理解できます。

調剤薬局の譲渡方法によって必要な手続きは異なる

必要な手続きは、事業譲渡か株式譲渡かによって異なります。

まずはそれぞれどのような手続きが必要なのか、大まかに見てみましょう。

事業譲渡の場合

事業譲渡は、会社の特定の事業(本記事の場合は調剤薬局事業)を他の法人に売却する方法です。

事業の売却とは、要するに運営会社が変わるということです。よって新規で、調剤薬局の開設許可を取り直す必要があります。

具体的には、保健所や厚生局での行政手続きが必要です。

許認可の再取得に加えて、従業員と雇用契約を再度結び直したりしなければなりません。

事業譲渡の場合、株式譲渡と比較して、手続きが複雑になると考えて良いでしょう。

株式譲渡の場合

株式譲渡は、会社の株主が保有する株式を買い手に譲渡することで、会社の経営権を移転する方法です。

株主が変わるだけで運営会社は変わらないので、事業譲渡と比べると手続きは楽です。

会社自体の法人格や契約関係、許認可はそのまま維持されます。

事業譲渡にせよ株式譲渡にせよ、譲渡の1ヶ月くらい前までには、全ての手続きを終わらせておかなければなりません。

具体的な手続きについては後述します。

調剤薬局の譲渡で必要になる遡及申請とは?

M&Aによる調剤薬局の譲渡では、遡及申請(そきゅうしんせい)が必要です。

遡及には「過去のことまで遡(さかのぼ)って効力を及ぼすこと」という意味があります。

遡及申請によって、保険薬局としての指定を過去にさかのぼって申請できます。

例えば4月1日以降に厚生局に届出をした場合でも、4月1日にさかのぼって保険収入を得られるといったイメージです。

簡単に言うと、譲渡によるタイムラグを埋めるために必要な申請です。

遡及申請を行わなければ、開設日から届出日までの期間は保険収入を得られません。

遡及申請には、以下のような要件があります。

  • ・譲渡前後で体制が大きく変わっていないこと
  • ・開設日から問題なく従来通りの機能を果たせていること
  • ・人員体制に変更がないこと
  • ・薬歴や患者の情報がしっかりと引き継がれていること

上記を満たしていないと、遡及申請が通らない可能性があるので要注意です。

調剤薬局の譲渡で売り手側が行う手続きはそれほど多くない

M&Aによる調剤薬局の譲渡は、主に売り手・買い手・仲介業者によって行われます。

そして実は、売り手が行う手続きは、買い手・仲介業者と比較してそれほど多くありません。

売り手が対応するのは、薬局情報の整理・提供や、契約締結に必要な書類への署名や確認作業くらいです。

前述した許認可の再取得や遡及申請などの手続きも、主に買い手側が行います。

売り手に「調剤薬局を譲渡したい」という意志がある場合、まず行うのがM&Aの仲介業者探しです。

仲介業者は「〇〇日までにこれを決めておく必要があります」といった形で、必要な手続きを丁寧に教えてくれます。

よって売り手側が、調剤薬局の譲渡手続きについてそれほど心配する必要はありません。

調剤薬局の譲渡で必要になる手続き

調剤薬局の譲渡で売り手・仲介業者側に必要になる手続きは、大きく以下の4つです。

  1. 1.調剤薬局M&A仲介業者への依頼
  2. 2.買い手候補探し
  3. 3.ディール実行
  4. 4.PMI

それぞれ詳しく見てみましょう。

1.調剤薬局M&A仲介業者への依頼

個人での調剤薬局M&Aは非現実的です。詳しい理由については後述します。

売り手が自力で買い手を探すのは難しく、適切な価格設定や契約条件を整えるのにも専門知識が必要です。

仲介業者に依頼することで、これらの負担を軽減し、スムーズに譲渡を進められます。

よってまずは、仲介業者を探しましょう。

M&A仲介業者には、譲渡価格の算定・買い手候補の紹介・交渉のサポート・契約書の作成支援など、さまざまな業務を依頼可能です。

M&Aと言っても、業界によって必要な手続きは異なります。そのため、薬局・医療業界に特化した仲介業者を探しましょう。

成功報酬型を採用している仲介業者であれば、費用面でのリスクはありません。万が一譲渡が成立しなかった場合には、費用を支払わずに済みます。

関連記事:調剤薬局の譲渡相場は?事業継承・M&Aに分けて詳しく解説

2.買い手候補探し

仲介業者は、過去の実績やネットワークを活用し、条件に合う買い手候補を複数提案します。

その中から「薬局を地域密着型で運営してくれる企業」「従業員の雇用を維持してくれる買い手」など、自身の希望条件と合致する候補を選びましょう。

最初から候補を1社に絞り込む必要はありません。

数十社以上の買い手候補が記載された「ロングリスト」を作成して、ひとまず3社程度に絞り込みましょう。

そこから1社に絞り込めたら、売り手企業の詳細な情報を盛り込んだ企業概要書を作成して、買い手にコンタクトを取ります。

3.ディール実行

ディールは、取引・売買といった意味の言葉です。買い手から前向きな返事をもらえたら、ディール実行に進みます。

まず買い手から、意向表明書を受け取ります。意向表明書とは、買い手側の希望条件や、PMI(統合プロセス)に至るまでの計画が記載された書類のことです。

交渉の方向性を決める重要な役割を果たします。

その後、売り手と買い手で交渉を行い、合意に達すると基本合意書を作成します。

基本合意書の作成後、買い手によって行われるのがデューデリジェンスです。

デューデリジェンスで問題が見つからなかった場合、最終条件の調整が行われます。

最後に双方が最終条件に同意すると、契約の締結に進み、M&Aが正式に成立します。

デューデリジェンスとは?:
対象企業の価値やリスクを調査する一連の手続きのこと。日本語では買収監査。

4.PMI

PMIは、Post Merger Integrationの頭文字を取った言葉で、M&A後の統合プロセスを意味します。

新しい経営者が薬局をスムーズに運営するためのプロセスです。

M&A契約が締結されたからといって、譲渡手続きが完了するわけではありません。

新しい経営方針の共有、従業員との面談、患者や地域医療機関への挨拶を通じて、信頼関係を構築します。

もちろんこれらは買い手が行うプロセスですが、なかには売り手側の協力が求められるものもあります。

調剤薬局の譲渡で買い手側が必要になる手続き

続いて以下は、調剤薬局の譲渡で買い手側が必要になる手続きの一例です。

  1. 1.薬局開設許可
  2. 2.店舗販売業許可
  3. 3.保険薬局指定申請
  4. 4.労災保険指定薬局申請

買い手側に必要な手続きですが、売り手側も知っておいて損はありません。

1つずつ詳しく解説します。

1.薬局開設許可

薬局を新たに開設・運営するためには、各都道府県の薬務課から「薬局開設許可」を取得する必要があります。

この許可は、薬機法に基づき、薬局の構造設備や人員配置、衛生管理などが基準を満たしていることを確認するものです。

申請には、薬局の図面、薬局付近の見取図、設備一覧、薬剤師免許証など多くの書類が必要です。

申請から許可取得までには、一般的に2週間ほどかかります。

薬局開設許可の有効期限は6年間です。その後も定期的な更新が必要です。

>>厚生労働省「薬局開設又は医薬品販売業の許可等の申請時の添付書類について」はこちら

2.店舗販売業許可

調剤以外の一般用医薬品を販売する場合「店舗販売業許可」が必要です。

この許可も各都道府県の薬務課が所管しており、販売する医薬品の種類や店舗の構造、管理体制などが基準を満たしていることを確認します。

申請には、販売予定の医薬品リスト、店舗の平面図、管理者の資格証明書などが必要です。

店舗販売業許可を取得することで、一般用医薬品の販売が可能となり、地域住民の多様なニーズに応えられます。

3.保険薬局指定申請

保険医療機関からの処方箋を受け付け、調剤報酬を請求するためには「保険薬局指定」を受ける必要があります。

この指定は、各都道府県の厚生局が行います。

申請には、薬局開設許可証の写し、平面図、薬剤師の氏名、人数などの書類が必要です。

指定を受けることで、健康保険適用の処方箋を取り扱うことが可能となります。

4.労災保険指定薬局申請

労働者災害補償保険(労災保険)の適用を受ける患者に対して調剤サービスを提供するためには「労災保険指定薬局」としての指定が必要です。

この指定は、労働基準監督署が所管しています。

申請には、薬局開設許可証の写し、保険薬局指定通知書、薬剤師の勤務体制などの書類が必要です。

指定を受けることで、労災保険適用の患者に対しても適切な医療サービスを提供でき、地域医療への貢献度が高まります。

>>厚生労働省「労災保険指定薬局の手続き」はこちら

調剤薬局の譲渡手続きには最短でも6ヶ月かかる

調剤薬局の譲渡手続きには、どんなに急いでも6ヶ月はかかります。譲渡に必要なプロセスが多岐にわたり、手続きや交渉に一定の期間を要するからです。

大規模なM&Aでは、PMIを含めると2年以上かかることもあります。一方、小規模な調剤薬局のM&Aであれば、1年以内に完了するケースも珍しくありません。

特にデューデリジェンスや行政手続きが、譲渡のスケジュールを左右する重要なポイントとなります。

調剤薬局の譲渡手続きにかかる期間の大まかな目安は以下のとおりです。

  • ・M&A先の選定:約1ヶ月
  • ・基本合意から最終契約まで:約3ヶ月
  • ・PMI:約6ヶ月

M&A先の選定は、スムーズに進むと2〜3週間で完了します。

基本合意から最終契約には、デューデリジェンスも含まれます。デューデリジェンスで課題が見つかった場合や交渉が難航した場合には、3ヶ月以上かかるでしょう。

実は調剤薬局の譲渡手続きのなかで最も時間がかかるのが、PMIです。PMIには、最低でも6ヶ月はかかると言われています。

従業員が納得しないなど想定外の問題が発生した場合は、予定よりも長引く可能性が高まるでしょう。

調剤薬局の譲渡は手続きが複雑なので個人で行うのは不可能と言って良い

調剤薬局の譲渡は、手続きが非常に複雑です。また、多岐にわたる専門知識が必要です。よって個人で完結させるのは実質不可能と言って良いでしょう。

譲渡プロセスでは、買い手側が進めるデューデリジェンスや行政手続きが中心となるため、売り手の負担は比較的少ないように見えるかもしれません。

しかし売り手には、買い手が手続きを進めるために必要な情報を整理し、正確に提供する責任があります。

例えば、財務状況や契約関係を明確に示した資料の準備、譲渡対象となる資産や負債のリストアップ、従業員の雇用情報の整理など、専門知識がなければ難しい作業が求められます。

最終契約の締結後も、譲渡金の受け取り方法や税務処理に対応するための専門的な知識が必要です。

特に調剤薬局は、医療機関との連携や保険請求に関わる複雑な業界規制の対象となるため、行政への届出や許可に関しても詳細な知識が求められます。

これらの業務を売り手個人で全て対応するのは非現実的です。よってM&A仲介業者のサポートを受けることが不可欠です。

調剤薬局の譲渡事例

弊社アウナラにおける調剤薬局の譲渡事例を4つピックアップして紹介します。

譲渡事例1

地域東日本地域
業種・職種門前医療機関主科目 内科系
調剤基本料1
後発加算1
月技術料200万円
月薬剤料551万円
日枚数41枚
ドクター年齢60代
在宅なし
従業員引継ぎなし
成約結果営業権1,700万円+固定資産+医薬品在庫

>>薬局特化のM&A仲介「アウナラ」の譲渡事例はこちら

譲渡事例2

地域西日本地域
業種・職種門前医療機関主科目 内科系
調剤基本料3
後発加算3
月技術料157万円
月薬剤料469万円
日枚数31枚
ドクター年齢50代
在宅あり
従業員引継ぎあり
成約結果営業権400万円+固定資産+医薬品在庫

>>薬局特化のM&A仲介「アウナラ」の譲渡事例はこちら

譲渡事例3

地域西日本地域
業種・職種門前医療機関主科目 内科系
調剤基本料1
後発加算1
月技術料121万円
月薬剤料651万円
日枚数28枚
ドクター年齢複数診
在宅あり
従業員引継ぎなし
成約結果営業権150万円+固定資産+医薬品在庫

>>薬局特化のM&A仲介「アウナラ」の譲渡事例はこちら

譲渡事例4

地域西日本地域
業種・職種門前医療機関主科目 内科系
調剤基本料1
後発加算2
月技術料190万円
月薬剤料242万円
日枚数30枚
ドクター年齢60代
在宅あり
従業員引継ぎあり
成約結果営業権300万円+固定資産+医薬品在庫

>>薬局特化のM&A仲介「アウナラ」の譲渡事例はこちら

調剤薬局の譲渡ならアウナラにおまかせください

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アウナラは、薬局業界特化型のM&A仲介会社です。

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料金体系は成功報酬型なので、M&Aが成功しない限り手数料はかかりません。また売却益の一部が仲介手数料になるので、売り手様は完全無料でM&Aを行えます。

アウナラは、これまでに全国のさまざまな調剤薬局M&Aを支援してきました。薬価交渉や税務支援などを含むM&Aの実績も豊富です。

アウナラでは、全ての調剤薬局経営者様にM&Aをおすすめすることはありません。「M&Aをしたほうが良いかどうか」から判断させていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。

相談料も完全無料です。

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まとめ

売り手と買い手に分けた調剤薬局の譲渡に必要な手続きやかかる期間について解説しました。

調剤薬局の譲渡は、仲介業者を利用することでスムーズに行えます。手続きにおける売り手側の負担は、買い手側と比べて少ないと言えるでしょう。

具体的な手続きについては、仲介業者からサポートを受けられます。よって売り手には、自社に合ったM&A仲介業者探しが大切です。

調剤薬局や医療業界のM&Aを得意とする仲介業者を選びましょう。

アウナラは、薬局業界特化型のM&A仲介会社です。成功報酬型なので、売り手様は完全無料でM&Aを行えます。詳細は以下よりチェックしてみてください。